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弁護士コラム 後遺障害

逸失利益の算定方法と分割で受け取る場合の違い

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はじめに

交通事故被害で後遺障害が残ったことにより、仕事に制限が生じてしまった場合、その程度に応じ逸失利益を請求することができます。

障害の程度によって仕事の制限の程度=収入減少の幅の目安が決まっており(例:14級であれば5%など)、それに応じて減収が生じると考えられる年数(基本は就労可能年齢である67歳までの年数。軽快が見込まれる後遺障害なら5年や10年などとされる。)に応じた中間利息を控除した数字をかけることで、逸失利益は算出されます。

この中間利息の控除というのは、一括(一時金)として逸失利益分の損害賠償金をまとめて受け取る場合に控除されるものです。

一方で、令和2年7月9日、最高裁判所が逸失利益を分割払い(定期金)で受け取ることを認める判決を下しました。

この場合には、中間利息が控除されず、受け取れる金額が変わってくる可能性が出てきます。

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逸失利益とは

逸失利益とは、交通事故によって稼得能力が制限され、減収することになってしまった将来の収入を補填するための賠償金のことです。

逸失利益は、将来の損害に該当するものなので、その金額を正確に計算することはできません。そのため、上で記載した通り、ある程度、類型的・定型的に金額をみなして計算します。

そして、一括で逸失利益分の損害賠償を受け取る際には、数年から数十年に及ぶ逸失利益をそれだけの期間かけて受け取ることに比べて過剰に利益を得ていることになります。長年にわたって分割で受け取る金額には利息に相当するものが含まれていると見做されるので、その金額のまま一括で受け取れることにしてしまうと、その利息分の利益まで受け取ることになってしまうのです。

そのため、中間利息の控除という減算操作をする必要があります。中間利息控除後の逸失利益は、就労可能な年数に該当するライプニッツ係数を用いて計算します。

 

逸失利益を分割(定期金)で受け取ることを認めた判例

損害賠償において、加害者からの賠償金は一括払い(一時金払い)が原則とされています。

しかし、法律は定期金賠償(分割払い)の方法を否定しているわけではなく、逸失利益などを定期金賠償させることの可否については、議論として争いのあった問題でした。

実際、将来介護費に関しては、以前から分割払い(定期金払い)での賠償が認められている例がありました。

以下に紹介する令和2年7月9日に出された最高裁判決は、逸失利益を定期金で受け取ることを正面から認めた最初の判例として意義のあるものです。

事案としては、道路横断中の事故当時4歳の子どもがトラックに衝突され、脳挫傷及びびまん性軸索損傷の傷害を負い、後遺障害等級3級3号に該当する高次脳機能障害の後遺障害を残したとのもので、本最高裁第一小法廷判決は、一時金賠償によるべきとの加害者及び保険会社側(上告人)らの主張を排斥した第一審及び控訴審判決を維持しました。

この判決により、被害者は後遺障害逸失利益として、100%の労働能力を喪失したことを前提として、月額35万3120円を労働開始年である18歳から労働可能年限とされる67歳までの49年間受け取れることになりました。

なお、月額収入の算定根拠は、症状固定年である平成24年の賃金センサス男性学歴計全年齢平均額529万6800円を月割りした額に、被害者の過失相殺率20%を減じた額になります。

 

判例での定期金賠償が認められるための要件

本件判決は、逸失利益を定期金によって受け取れる場合について、「被害者が希望していること」、「損害賠償制度の目的・理念に照らして相当と認められるとき」という2つの要件が設定されている点に注意する必要があります。

具体的にどのような場合にこれらの要件に当てはまるといえるかは、今後の下級審裁判例や学識者による解説の積み重ねを見ていかなければなりませんが、今の時点で以下のような可能性があると思います。

すなわち、定期金賠償が一時金賠償よりも結論において賠償金額が高く、かつ長年にわたって加害者に負担をさせるものである以上、将来(それもかなり遠い将来まで想定されるもの)における被害者の不利益の程度がかなり大きいことが必要でしょう。具体的には若年の被害者(おそらく就労前の年齢。後遺障害で苦しむ年数が長くなる。)であり、労働能力の喪失の度合いがかなり大きい(ほぼ就労できなくなるような水準。)であることが必要なのではないでしょうか。

 

逸失利益を定期金で受け取るメリット・デメリット

一時金賠償の場合と比較したときの定期金賠償のメリット・デメリットについても確認しておきましょう。

(1)定期金で受け取るメリット

・一時金よりも多額の賠償金を受け取れる可能性がある

逸失利益を定期金で受け取る最大のメリットは、加害者から受け取ることのできる賠償金(の総額)が一時金賠償の場合よりも多くなる可能性が高いことです。定期金賠償の場合には、一時金賠償の場合に行われる「中間利息の控除」がないからです。

・毎月の生活費に組み込みやすくなる(運用のリスク・手間がなくなる)

働くことが難しいほどの重度の後遺障害が残ってしまった場合には、加害者からの賠償金は「今後の生活費」の重要な資金源になる場合も多いといえます。

しかし、逸失利益を一時金で受け取った場合には、その賠償金を被害者自らが管理・運用していかねばなりません。障害の程度によっては、その負担が看過できないほど重いということもあるでしょう。

(2)定期金で受け取るデメリット

・加害者との関わりが長期になってしまう

定期金賠償を選択した場合には、加害者と長期間の関係をもたなければならなくなります。通常であれば、賠償金の支払いは加害者が加入している保険会社が行うので、加害者本人との関係が続くというわけではありませんが、相手方の保険会社に不信感を感じている場合などには、関係を持ち続けることが大きなストレスとなる場合もあるでしょう。

・加害者が資力不足となるリスク

また、支払期間が長期間になれば、支払者(保険会社・加害者本人)の資力不足のリスクも抱えることになります。

その意味では、加害者が無保険者(任意保険未加入)の場合に定期金賠償を選択することはおすすめできないということになりますが、任意保険に加入していた場合であっても保険会社が何かしらの事情で破綻してしまう可能性があることは否定できません。

・定期金(毎回の賠償金)の減額を求められる可能性

定期金賠償を選択した場合には、その後に事情変更が生じた場合には、その支払者から「確定判決の内容の変更を求める訴え(民事訴訟法117条)」を提起されるリスクを抱えます。

たとえば、その後の経済状況が変動したことで、社会の賃金水準が大幅に下がったという場合には、毎月の定期金の減額を求められる場合も十分ありえます。

 

まとめ

最新の最高裁判例によって、今後は逸失利益を定期金で受け取るという選択肢が新たに加わることになりました。

しかし、定期金で逸失利益の賠償を受け取れるケースは限られるうえ、中間利息の控除を回避できる点などで被害者に大きなメリットがある一方、デメリットもあるものすから、それぞれのケースが抱える事情に合致した方法を慎重に選択することが大切です。

適切な選択をするためにも弁護士に相談されることをお勧めします。

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