慰謝料とは、被害者の負った精神的苦痛に対して、加害者から支払われる損害賠償金のことです。交通事故においては、怪我によって後遺障害が残ったことについての精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料と、怪我によって入通院をしなければならなくなったことについての精神的苦痛に対する入通院慰謝料があります。
今回は、交通事故の入通院慰謝料について説明していきます。
入通院慰謝料とは
入通院慰謝料は、上で述べた通り、交通事故により入通院をしなければならなくなったことについての精神的苦痛に対する賠償金です。治療(入通院)の必要な怪我をしたことに対する慰謝料という意味で傷害慰謝料と呼ばれることもあります。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定を受けないともらうことはできませんが、入通院慰謝料は、後遺障害等級が認定されない怪我でも、病院で治療を行っていればもらうことが出来ます。
入通院慰謝料の算定
慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償金ですので、治療費や休業損害に比べて金額を明確に算定することが難しいです。
交通事故の損害賠償では、客観的な基準によって明確に慰謝料を算定しようとして、期間や日数が明確である入通院と、認定された後遺障害等級が明確である後遺障害について慰謝料を算定できるものとしています。
そのため、入通院慰謝料は、入通院期間・通院日数によって算定されます。
弁護士(裁判)基準、任意保険基準、自賠責基準
交通事故の慰謝料算定には、弁護士に依頼した場合に適用される弁護士(裁判)基準と、任意保険会社が独自に決めている任意保険基準、自賠責保険の支払いのために定められている自賠責基準があります。
詳しくは別の記事で説明していますが、弁護士(裁判)基準が一番高く算定され、自賠責基準は弁護士(裁判)基準と比べると大きく下がり、任意保険基準は自賠責基準と同等か少し高いくらいの慰謝料が設定されている基準となります。
以下では、弁護士(裁判)基準の場合の慰謝料の金額についてみていきます。
入通院慰謝料の別表
弁護士基準では、骨折等の通常の怪我の場合に適用される別表1とむち打ち症で客観的な症状(他覚所見)等がない場合等に適用される別表2という2つの基準があります。
まず、通常の怪我に適用される別表1は以下の通りです。
通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度を踏まえ実通院日数の3.5倍程度の日数を慰謝料算定のための通院期間とすることがあります。
また被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められたりする場合には増額されることがあります。また、障がいの部位・程度によっても増額されることがあります。
さらに、ギブスによる固定が必要で、安静にしておく必要があるといわれた自宅療養期間も入院期間とみなされることがあります。
次に、打撲やむちうちなど他覚所見がないけがの場合に適用される別表2は、以下の通りです。
通院が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を踏まえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間とすることがあります。
入通院慰謝料の例
・衝突事故による足と手の骨折で30日間の入院と、退院後の6カ月間(週に2回ペースで合計48回)通院した事例
この場合、骨折ですので上の別表1が適用され、入院1か月と通院6カ月の欄が交差する、149万円が入通院慰謝料となります。
・追突事故で、他覚所見の無いむち打ちとなり、5カ月間(週に2回ペースで合計40回)の通院をした事例
この場合、他覚所見の無いむち打ちですので、別表2が適用され、入院なし(一番左端)で通院5カ月の欄である79万円が入通院慰謝料となります。
我慢せずに通院を
上で述べたように、入通院期間・日数が増えれば、請求できる慰謝料も比例して増額していきます。
そのため、痛みなどの症状がある場合には、我慢することなく、なるべく多くの日数通院することが大切といえるでしょう。
ただ、症状固定(医師から、これ以上治療しても症状が改善しないと判断されること)がされた後は、通院による慰謝料は発生しませんので注意しましょう。
まとめ
慰謝料という言葉はよく聞きますが、交通事故の場合にどのような慰謝料が認められ、どれくらいの金額になるかは分かりにくい部分があります。入通院慰謝料に関しては、入通院の期間・日数に左右されるということを覚えていてください。また、弁護士に依頼するかどうかで適用される基準が異なり、同じ期間・日数でも慰謝料の金額に差が出ることも重要なポイントです。
事故にあって、慰謝料が気になる際には、一度弁護士にご相談ください。